求人票は、企業との最初の接点です。ですが、そこに書かれている情報はあくまで「企業側の一方的な発信」。本当に働きやすい職場かどうかは、文字通り“行間を読む”ことが求められます。
本記事では、求人票に隠されたブラック企業の兆候を、具体例と共に5つの視点から詳しく解説していきます。
1. 極端に高い給与表示には注意
✅ なぜ危険?
「月収50万円可」「年収800万円以上可能」「未経験でも高収入!」など、目を引く高収入を強調した求人は、真っ先に疑うべきサインです。
✅ 背景にある問題
多くの場合、このような求人は実際の給与の内訳が明確にされていません。たとえば、以下のような構成になっていることがあります:
- 基本給:18万円
- 固定残業代:6万円(45時間分)
- 成果報酬:業績次第
- 深夜勤務手当や休日出勤手当:別途支給なし or 固定に含まれる
見た目の給与は高くても、実態は長時間残業や過酷なノルマが前提であり、結果として時給換算すれば最低賃金を下回るケースすらあります。
✅ 実例
「未経験OK・営業職・月収45万円~」と書かれていた求人に応募したAさん。入社してみると、
・基本給は20万円程度
・残業代は固定(60時間)で支給済み
・営業成績に応じて月収が増減する完全歩合制に近い形だった
結果として、売上目標が達成できなければ20万円しか手に入らない状況でした。
✅ チェックポイント
- 「給与」欄の細かい内訳があるか
- 固定残業代の時間数と金額が記載されているか
- 〇〇円「可能」や「上限」といった表現にごまかされていないか
2. 「アットホームな職場」はあいまいワード
✅ なぜ注意?
「アットホームな雰囲気です」「社員同士仲が良いです」などの表現は、一見するとポジティブに聞こえます。しかし、実態を隠すための常套句である場合も少なくありません。
✅ 背景にある問題
この表現が使われる職場は、しばしば上下関係が曖昧で属人的な組織運営をしていることがあります。
特に社長や上司のワンマン体制で、「空気を読む」ことが求められるケースが多く見られます。
✅ 実例
「アットホームで風通しの良い会社です」という言葉に惹かれて入社したBさん。
入ってみると、
- 業務に関する明確なマニュアルが存在せず、「先輩のやり方を見て覚えて」と言われる
- 社内ではLINEグループで休日の連絡が頻繁に来る
- 飲み会やイベントへの参加が“自由参加”と言いつつ、欠席すると評価が下がる
つまり、プライベートと仕事の境界線が非常にあいまいだったのです。
✅ チェックポイント
- 「アットホーム」以外の職場文化について記述があるか
- 研修制度や業務マニュアルなどの仕組み面が書かれているか
- 評価制度やキャリアパスの説明があるか
3. 常に求人が出ている・募集期間が長すぎる
✅ なぜ要注意?
通年で募集している企業や、定期的に同じ求人を出している企業は、慢性的な人手不足が起きている可能性が高いです。
✅ 背景にある問題
社員の定着率が低く、辞める人が続出している企業では、常に採用活動をし続けなければならなくなります。つまり、社内環境が根本的に改善されていないのです。
✅ 実例
Cさんが転職サイトで見たある企業の営業職。半年間にわたって同じ条件・同じ文面で掲載され続けていたため気になって調査。
・口コミサイトを見ると、「上司のパワハラがひどい」「精神的に限界で辞めた」という声が多数
・新人が半年もたずに辞めるのが当たり前との記載も
求人が続いているのは「成長中のため人材募集中」ではなく、「辞める人が多いため補充せざるを得ない」可能性があるのです。
✅ チェックポイント
- 掲載期間が異常に長くないか?(数ヶ月以上)
- 同じ企業が職種を変えて何度も掲載していないか?
- 過去の求人履歴や口コミと照らし合わせてみる
4. 業務内容があいまい・広すぎる
✅ なぜ疑うべき?
「総務業務全般」「幅広く活躍できます」「裁量の大きな仕事」――これらの言葉は、一見やる気をそそりますが、**実際は業務の境界線が曖昧な“便利屋ポジション”**であることも。
✅ 背景にある問題
人手が足りていない中小企業などでは、社員1人に多くの役割を押し付けがち。
明確な職務分掌がないため、トラブル時の責任も不明確になりやすく、評価制度も曖昧になりがちです。
✅ 実例
「営業サポート業務」として採用されたDさん。
ところが、実際は以下のような業務も兼任:
- 来客・電話対応(受付)
- 経理の仕訳入力
- 新人研修の資料作成
- 社内イベントの手配
- 上司の雑務(私用含む)
結果として、本来の営業サポート業務に集中できず、評価されるどころか「気が利かない」と叱責される始末。
✅ チェックポイント
- 職務内容が具体的に記載されているか
- 「なんでもやります」「柔軟に対応できる方」などの抽象的な表現が多くないか
- 「兼務」が前提になっていないか
5. 「やりがい」や「成長」を強調しすぎている
✅ なぜ要注意?
求人票でやたらと「やりがい」や「成長環境」をアピールしてくる企業は、それ以外に強調できる条件がない可能性があります。
✅ 背景にある問題
やりがいは重要な要素ですが、本来は労働条件・福利厚生・教育制度などとセットで語られるべきです。にもかかわらず、待遇や残業時間に一切触れず、精神論ばかり述べている場合は危険信号。
✅ 実例
「成長できる環境」「若手が活躍!」というフレーズに惹かれて入社したEさん。
ところが実態は、
- 研修制度なし、放任主義
- 成長=「自分で学べ、ついてこい」式
- 長時間残業は「成長のチャンス」と言い換えられていた
「やりがいのために我慢できるだろう?」という自己犠牲を前提とした組織文化が根付いていました。
✅ チェックポイント
- 「やりがい」「成長」以外の待遇・福利厚生の記載があるか
- 具体的な教育体制・キャリア支援制度が記載されているか
- 労働時間や残業、休日に関する情報がしっかり書かれているか
まとめ|“求人票は広告”という前提を忘れずに
求人票は、企業にとっての広告です。
つまり、良いところしか書いていない可能性が高いということ。
だからこそ、次のような視点を持って読みましょう:
- 表現が抽象的すぎないか?
- 給与や業務の詳細に“ごまかし”がないか?
- その企業の評判や過去の求人と矛盾がないか?
最後にもう一つ大切なのは、「違和感があるなら、いったん立ち止まる」こと。
無理に応募せず、信頼できる転職エージェントや口コミサイトを活用して、慎重に判断してください。